How To Go

アクティブ・ラーニング メモ

○アクティブラーニングの定義(溝上の場合)

 

一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知プロセスの外化を伴う。

 

・「一方的な知識伝達型講義を聴くという学習」を基準とし、より能動的な学習をアクティブラーニングとしている。

 ・頭の中で起こっている認知プロセス(=知覚・記憶・言語・思考<論理的/批判的/創造的思考、推論、判断、意思決定、問題解決など>)を、書く・話す・発表するなどの活動を通して外化させることが求められている。

 

○なぜアクティブラーニングか―日本の場合

 

 ①高等教育の大衆化(ポジショニング構図A)

高等教育の大衆化…1980年代の学生:「大学で学ぶことの意味、目的意識が希薄であ

ったり、伝統的な方法で講義をしても関心を示さなかったり」した。(p.32)

 ⇒教授パラダイムから学習パラダイムへの転換(両者の詳細はp.36 表2-2)

   …受動的学習を乗り越えようとする動き

 

 ②社会変化への対応(ポジショニング構図B)

   学校外からの圧力…「卒業後の仕事・人生に適応していくための技能・態度(能力)を育てているか」が学校に課題として課せられた。(p.46)

  ⇒教授パラダイムから学習パラダイムへの転換

   …受動的学習を乗り越えるだけではなく、その先の「アクティブ」のポイントを積極的に特定しようとする動き。特に「情報・知識リテラシー」を育てるべき(溝上)。

 

   ※具体的にはどのような社会か?

情報コミュニケーション技術の発達 →「検索型の知識基盤社会」の到来(p.54)

    =「インターネットのグローバルな普及を前提に、私たちの知識の蓄積や流通の最も重要な基盤は書棚や図書館の書物からネット上のデータベースやアーカイブに」移りつつある。(p.56)

    ⇒「情報・知識リテラシーの習得の必要性

     1.情報の知識化

     2.知識の活用

     3.知識の共有化・社会化

     4.知識の組織化・マネジメント

 

 

○補足―日本におけるアクティブ・ラーニングの背景と今後の動き

 

☐アクティブラーニングの定義―中教審の定義

 

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修に参加することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブラーニングの手法である。

平成24年8月28日「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~(答申)」)

 

 

・「等が含まれる」「等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」

…これらの学習法のどれかを行えばそれでよいのか?

  ①主体的な学びであることを強調し、「学習」ではなく「学修」という言葉を使っている。

  ②「認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」という目標が明記されている。「汎用的能力の育成」がされない学修はアウト。

 

☐経済界の影響

・「これからの企業・社会が求める人材像と大学への期待」(経済同友会平成27年4月2日)

 大学教育に関して「アクティブ・ラーニングの導入によるコミュニケーション能力の向上、

「様々な社会活動体験の増加」、「学生の能動的な学びによる学修時間の確保」を要求。

・質的転換答申の時の中教審会長は三村明夫(新日本製鐵株式會社代表取締役会長)。

 

 

 

☐大学教育改革から義務教育改革へ

・「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について」(平成26年12月22日)

 

・センター入試の廃止

・「高等学校基礎学力テスト(仮称)」で基礎学力を評価する。高校段階における学習成果を把握するための参考資料の一部として用いる。

・「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で「知識・技能」を単独で評価するのではなく、「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する。

・「教科型」に加えて、現行の教科・科目の枠を越えた「思考力・判断力・表現力」を評価するため、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題する。将来は「合教科・科目型」「総合型」のみとし、「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」を総合的に評価することを目指す。

・解答方式については、多肢選択方式だけでなく、記述式を導入する。

・年複数回実施する。

・「1点刻み」の客観性にとらわれた評価から脱し、大学及び大学入学希望者に対して、段階別表示による成績提供を行う。

・CBT方式での実施を前提にする。

・英語は四技能を総合的に評価できる問題にする。民間の資格・検定試験を活用する。

・そのうえで、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、その他受検者のこれまでの努力を証明する資料などを活用することが考えられる。=多元的な評価尺度によって、「確かな学力」として求められる力を的確に把握することを目指す。

 

 

・段階別評価

→同一点数の受験者の増加

 →「小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、その他受検者のこれまでの努力を証明する資料などを活用する」必要性が出てくる。

・「工程表」によれば、高等学校基礎学力テスト(仮称)は平成31年度、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は平成32年度から開始。

 →今の小学生、中学生…アクティブ・ラーニングによる学修が急がれる。

 

☐結局は目的が肝心

・アクティブ・ラーニングでスキルの形成を行っても、「何のため?」という問いに個々の教師、学校はどう答えられるだろうか。知識がスキルに置き換わるだけになってしまう可能性もある。

・社会科に関しては、出力型の授業はこれまでも実践されてはきた。

 ⇒ただ、何のためのどんな能力形成を目指して行うのかは、議論の余地がある。

 

 

アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換

アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換